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穂に出でて われのみまねく 糸すすき 来る人あれな
ふるさとの秋
                   光厳院

(ほにいでて われのみまねく いとすすき くるひと
 あれな ふるさとのあき)

意味・・すすきが糸の穂を出して私をしきりに手招き
    している。私の他にも、糸を操るように思い
    出をたぐって来る人があってほしいなあ。こ
    の故郷の秋へ。

    「ふるさと」とは、かって居住したことのある
    土地。懐かしいその山里を訪れた作者を、風
    にそよぐ穂を出したすすきが出迎えたという
    のである。

 注・・のみ=・・だけ。しきりに、むやみに。
    来る=繰る、の意を含む。

作者・・光厳院=こうげんいん。1313~1364。北朝の
    第一代天皇。南北朝の動乱で土地を転々とする。
   「風雅和歌集」を親撰(自ら編纂すること)。


出典・・松本章男著「花鳥風月百人一首」。