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吉野なる 菜摘の川の 川淀に 鴨ぞ鳴くなる
山陰にして         
               湯原王

(よしのなる なつみのかわの かわよどに かもぞ
 なくなる やまかげにして)

意味・・吉野にある菜摘の川の流れのよどみで、
    鴨の鳴く声が聞こえる。あの山の陰の
    所で。

    山の静寂感を詠んだ叙景歌です。

 注・・菜摘の川=吉野の宮滝の東方、菜摘の地を
     流れる吉野川。
    川淀=川の流れのよどんでいる所。

作者・・湯原王=ゆはらのおおきみ。生没年未詳。
    志貴皇子の子。万葉の後期の歌人。

出典・・万葉集375。