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すがる鳴く 秋の萩原 朝たちて 旅ゆく人を 
いつとか待たむ
                詠み人しらず

意味・・野には萩が一面に咲き乱れ、蜂がぶんぶんと飛び交う
    秋となった。その美しい萩の花を分けて、うちの人は
    朝立ちの旅に出るのだが、無事に帰ってくれるのは
    はたしていつのことだろうか。

    不便や危険が多かった昔、旅に出る人を送る時の
    不安な気持や夫との別れを悲しむ女性の気持を詠ん
    でいます。

 注・・すがる=腰の細い小型の蜂の古名。じが蜂。
    人=特定の人を指していう語。あの人。夫。
    いつとか待たむ=いつ帰って来ると私は待つのだろ
     うか。「いつまで待っても帰るまい」という気持
     も含まれている。

出典・・古今和歌集・366。