1786



中々に おいはほれても わすれなで などかむかしを
いとしのぶらん
                  源実朝

 

(なかなかに おいはほれても わすれなで などか
 むかしを いとしのぶらん)

 

意味・・老いて呆(ぼ)けてしまっても、かえって忘れ
    ないで、どうして昔の事をこんなに偲ぶので
    あろうか。

 

    日常の近時の事は忘れても、往時の事はかえ
    って忘れないのが老人の常であるさまを詠ん
    でいます。

 

 注・・中々に=かえって、むしろ。
    おいはほれても=「老いほる」という複合動
     詞の間に強調の「は」が入ったもの。
    ほれても=惚れても。年老いてぼける。   
    などか=どうして、なぜ。
    いと=とても、非常に。

 

作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1219。
    12歳で征夷大将軍になる。甥の公卿に鶴岡八
    幡宮で暗殺された。

 

出典・・金槐和歌集・597。