中々に おいはほれても わすれなで などかむかしを
いとしのぶらん
源実朝
(なかなかに おいはほれても わすれなで などか
むかしを いとしのぶらん)
意味・・老いて呆(ぼ)けてしまっても、かえって忘れ
ないで、どうして昔の事をこんなに偲ぶので
あろうか。
日常の近時の事は忘れても、往時の事はかえ
って忘れないのが老人の常であるさまを詠ん
でいます。
注・・中々に=かえって、むしろ。
おいはほれても=「老いほる」という複合動
詞の間に強調の「は」が入ったもの。
ほれても=惚れても。年老いてぼける。
などか=どうして、なぜ。
いと=とても、非常に。
作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1219。
12歳で征夷大将軍になる。甥の公卿に鶴岡八
幡宮で暗殺された。
出典・・金槐和歌集・597。