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空を突く 岩に照る日の てりかへし 谷のひかげのみ
雪を照らす
                  三井甲之

 

(そらをつく いわにてるひの てりかえし たにの
 ひかげのみ ゆきをてらす)

 

詞書・・御嶽に遊ぶ。

 

意味・・思いリュックを背負って山登りをしていて、
    かなり登った所で一休み。周りの風景を見渡
    すと、遠くは山々が連なり、間近は空を突き
    刺すように、あるいは削り立った高い岩が見
    える。空は晴れて青空が見えるが日影になっ
    た谷には雪が消え残っている。雪は岩に反射
    された光によって白々とはっきり見える。
    うん、ここまでよく登ったものだ。さあ元気
    をだして出発だ。

 

 注・・御嶽=御嶽山。長野県と岐阜県にまたがる
     3067mの山。

 

作者・・三井甲之=みついこうし。1883~1953。
    東大文学部卒。右翼思想家。根岸短歌会に属
    し伊藤左千夫の指導を受ける。

 

出典・・湯浅竜起著「短歌鑑賞十二か月」。