よそながら かげだに見むと 幾度か 君が門をば
過ぎてけるかな
樋口一葉
(よそながら かげだにみんと いくたびか きみが
かどをば すぎてけるかな)
意味・・私の好きな人の姿をほんの少しだけでも見たいと
思って、気づかれないように、あなたの家の門の
前を何度も通り過ぎたのです。
明治時代に生まれた一葉は色々と制約があり自由
に生きる事が出来なかった。戸主制度もその一つ
で戸主になれば家族を養わなければならず、好き
な人が出来ても嫁いで行けなかった。
一葉も戸主であり好きな相手も戸主であったので、
結婚したくても出来ない。せめて相手の姿を遠く
から見て心を慰めたい、という気持ちを詠んでい
ます。
注・・よそながら=それとなく、間接的に。
戸主=旧民法で、一家の長で戸主権を持ち家族を
養う義務があるもの。
作者・・樋口一葉=ひぐちいちよう。1872~1896。24歳。
結核を患い亡くなる。
出典・・樋口一葉和歌集(林和清著「日本の悲しい歌」)