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病むわれに その子五つの をととなり つたなの笛を
あはれと聞く夜
                   与謝野晶子

 

 

(やむわれに そのこいつつの おととなり つたなの
 ふえを あわれときくよる)

 

意味・・病気で寝ている私を慰めようと、幼い五歳の
    弟が、一所懸命笛を吹いてくれています。そ
    の笛の音は本当にまだつたないけれど、その
    心根が嬉しく、心に沁みてひとり涙がにじん
    できます。殊にしみじみと感じられる夜です。
    今夜は。

 

 注・・をとと=弟。おとうと。
    つたな=拙。未熟だ、まずい。

 

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。
    堺女学校卒。与謝野鉄幹と結婚。「明星」の
    花形となる。

 

出典・・歌集「みだれ髪」