0841



朝夕の 餉も誰か すすむべし 我が病みぬれば
かなしき背子よ
               杉浦翠子 

(あさゆうの かれいもたれか すすむべし わがやみ
 ぬれば かなしきせこよ)

意味・・朝夕の食事も、誰が心をこめて作ろうか。作り
    はしない。妻である私は病んでいて、あなたの
    食事の事さえしてあげられないでいる。可哀そ 
    うな夫よ。

    病む身のわびしさと夫恋いの思いを詠んでいま
    す。

 注・・餉(かれい)=携行食、食糧。
    すすむ=勧む。飲食物を献上する。
    背子=妻が夫を女性が恋人を呼ぶ語。

作者・・杉浦翠子=すぎうらすいこ。1891~1960。北
     原白秋に師事。夫は画家の杉浦非水。

出典・・歌集「寒紅集」。