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知らざりき 雲居のよそに 見し月の かげを袂に
宿すべしとは            
                  西行

 

(しらざりき くもいのよそに みしつきの かげを
 たもとに やどすべしとは)

 

意味・・思っても見なかったことだ。雲居はるか彼方
    に仰ぎ見る月にも比すべき高貴な女性に恋を
    し、叶わぬ恋ゆえの涙に濡れる袖に月を宿さ
    ねばならぬとは。

 

    身分がかけ離れた人に恋をしたが、叶わない
    恋と知り、泣きたくなった気持を詠んでいます。

 

 注・・雲居=雲のある所、空。「雲居の月」は高貴な人に
     たとえる。

    よそ=かけ離れた所。


 作者・・西行=さいぎょう。1118~1191。俗名佐藤義
      清。下北面の武士として鳥羽院に仕える。
      1140年23歳で財力がありながら出家。出家
      後京の東山・嵯峨のあたりを転々とする。
      陸奥の旅行も行い30歳頃高野山に庵を結び
     仏者として修行する。

 

出典・・山家集・617。