いとほしや 見るに涙も とどまらず 親もなき子の
母をたづぬる
源実朝
(いとほしや みるになみだも とどまらず おやも
なきこの ははをたずぬる)
詞書・・道のほとりに幼き童(わらわ)の母をたづねて
いたく泣くを、そのあたりの人にたづねしか
ば、父母なむ身まかりにしと答え侍りしを聞
きて詠める。
意味・・いじらしい事だなあ、見ていると涙がとまら
ない、両親のいない子が母を探している。
まだ子供なのに親を失って母親恋しさに泣き
続けている。泣いてもどうにもならないが、
親を慕(した)うのは子供が愛情を求めるいわ
ば本能である。境遇や環境からいえばどうに
もならないだけに、それによる悲しみは深い。
注・・いとほし=気の毒だ、かわいそうだ。
たづぬる=尋ぬる。探し求める。
身まかり=死ぬこと。
作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1219。
頼朝の二男。第三代鎌倉将軍。甥に暗殺され
た。
出典・・金槐和歌集。