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都近き 小野大原を 思ひ出づる 柴の煙の
あはれなるかな
                西行

 

(みやこちかき おのおおはらを おもいいずる しばの
 けむりの あわれなるかな)

 

詞書・・下野国で炭を焼く煙を見て。

 

意味・・下野(しもつけ)国で炭を焼く煙を見ると、都に
    近い小野大原の炭を焼く煙が思い出され、しみ
    じみと感慨が催されてくることだ。

 

    京から岩手・山形・秋田・栃木と長い旅を続け
    ており、旅の疲れも出て来て、都の事がちよっ
    とした事で恋しくなり詠んでいます。

 

 注・・小野大原=現在の京都市左京区大原から上高野
     に到る一帯。この地から京の街に薪を売りに
     行く大原女は有名。
    柴の煙=柴を焚き炭を焼くその煙。
    下野(しもつけ)=現在の栃木県。
    あはれ=感慨深いさま。

 

作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。俗名佐藤義清。
    下北面の武士として鳥羽院に仕える。1140年23
    歳で財力がありながら出家。出家後京の東山・
    嵯峨のあたりを転々とする。陸奥の旅行も行い
    30歳頃高野山に庵を結び仏者として修行する。

 

出典・・山家集・1133。