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さりともと 待ちし月日ぞ 移りゆく 心の花の
色にまかせて
                  式子内親王

 

(さりともと まちしつきひぞ うつりゆく こころの
 はなの いろにまかせて)

 

意味・・いくらなんでもそのうちに訪れて来るだろう
    と待っていた月日は空しく過ぎてゆく。あの
    人の心の花の色があせってゆくままに。

 

    男の約束を信じて、むなしく月日を過ごして
    いる女の嘆きです。本歌の嘆きをかみしめた
    歌となっています。

 

    本歌は古今集・小野小町の歌です。

    色みえでうつろふものは世の中の人の心の花
    にぞありける    (意味は下記参照)

 

 注・・移りゆく=変化する、色あせる。
    心の花の色=美しくは見えるが変わりやすい
     人情。

 

作者・・式子内親王=しよくしないしんのう。1201年
    没。後白河上皇の第二皇女。

 

出典・・新古今和歌集・1328。

 

本歌です。

 

色見えで 移ろふものは 世の中の 人の心の 
花ぞありける           
                 小野小町

 

(いろみえで うつろうものは よのなかの ひとの
 こころの はなぞありける)

 

意味・・花ならば色が変わっていくのは、はっきりと
    目に見えるのだけれど、色に見えないで移り
    変わるものは、世の中の人の心という花だっ
    たのですね。

 

    花は美しいが衰えやすく散りやすい。そして
    その色は目に見えて、はっきりと変化してい
    くのであるが、人の心の方は、変化して移っ
    ていく様子が、全く目に見えないことを嘆い
    いるものです。


    思う人の心が変わり冷たくなったことを悲し
    んで、美しいがあせていく心の花として詠ん
    でいます。

 

作者・・小野小町=おののこまち。伝未詳。六歌仙の
    一人。

 

出典・・古今和歌集・797。