くれないの 薔薇ふふみぬ 我病 いやまさるべき
時のしるしに
正岡子規
(くれないの うばらふふみぬ わがやまい いやまさる
べき ときのしるしに)
意味・・紅いばらの蕾が咲きそうにふくらんでいる。それ
はちょうど、自分の病がいよいよひどくなって行
く時のきざしのように。
花が散れば憂(うれ)い、花が咲けば病勢の進む予
感におののかねばならない、長くない生命を嘆き
いとしみつつ詠んだ歌です。
病が悪化して治る希望は無いが、それでも諦めず
に生きる。生きている価値があるのだと、歌を詠
み、絵を描いて楽しむ。その喜びを持っていると
自分に言い聞かせています。
注・・ふふみぬ=つぼんだ、蕾がふくらんだ。
いや=いよいよ、ますます。
まさる=多くなる、増す、加わる。
しるし=証拠、兆(きざ)し。
作者・・正岡子規=まさおかしき。1867~1902。東大
国文科中退。結核や脊椎カリエスを患う。
出典・・歌集「竹の里歌」。