亡き人を なくて恋ひんと ありながら 相見ざると
いづれまされり
いづれをか 世になかれとは 思ふべき 忘るる人と
忘らるる身と
思へども よそなるなかと かつ見つつ 思はぬ中と
いづれまされり
和泉式部
詞書・・人に定めさせまほしき事。
意味・・もうこの世では逢えない人を恋い慕うのと、
生きていながら遠ざかっている人を思い続け
るのと、辛さは一体どちらがまさっているだ
ろうか。
意味・・心変わりして去って行く人と、人に去られる
身と、どちらがいなくなればよいだろうか。
意味・・慕っていても振り向かれぬ間柄と、一緒に暮
らしていても心離れのしている間柄とどちら
がいいだろうか。
以上の事を人に決めてもらいたいものだ。
注・・ありながら=生きていながら。
作者・・和泉式部=いずみしきぶ。生没年未詳。980年
頃の生まれで70歳くらいまで生きたという。
出典・・和泉式部集。