0239

 

盲ひては もののともしく 隣家に 釘打つ音を
をはるまで聞く
                 明石海人

 

(めしいては もののともしく となりやに くぎうつ
 おとを おわるまできく)

 

意味・・目が見えなくなってから、些細な事にも心が
    ひかれるようになった。今、隣で家の修理が
    なされているのだろうか。釘を打つ音を最後
    まで聞き入っている。

 

 注・・ともしく=羨しく。めったにない物に心がひ
     かれる。

 

作者・・明石海人=1901~1939。ハンセン病を患い岡
    山県の愛生園で療養。手指の欠損、失明、喉
    に吸気管を付けた状態で歌集「白描」を出版。

 

出典・・歌集「白描」。