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二世とは 契らぬものを 親と子の 別れの袖の
哀れとぞ知る
                 島津義久

 

(ふたせとは ちぎらぬものを おやとこの わかれの
 そでの あわれとぞしる)

 

意味・・夫婦は二世(にせ)の契りをするが、親子は二世
    の契りをしない。しかし、夫婦と同様に親子に
    も愛情がある。親子が離れ離れになるおりの袖
    は、涙に濡れて、可哀そうなものと分ってほし
    い。

 

    義久が竜造寺氏・大伴氏を滅ぼし九州全域を手
    中に収めるが、豊臣秀吉の九州征伐に敗れる。
    この時、秀吉に三女を人質に取られた時に詠ん
    だ歌です。
    「二世の契り」は来世まであなたを愛する心は
    変わらず結ばれていようという、夫婦の約束で
    ある。この場合父と娘という関係であり、夫婦
    でないので「二世の契り」ではない。しかし、
    それに相当する愛が二人にあることを言外に言
    っている。「別れの袖」は、分かれる時に名残
    りを惜しんで涙をぬぐう袖の事であり、別れの
    辛さを知ってほしいというものです。

    義久は、この歌を細川幽斎に示した所、幽斎は
    これを秀吉に伝えた。そして、義久は、帰国に
    際して娘を連れて帰る事が出来たという。

 

作者・・島津義久=しまづよしひさ。1533~1611。

           安土桃山時代の戦国武将。島津家十六代当主。

 

出典・・綿貫豊昭著「戦国武将の歌」。