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とりとめなき 履歴の中に かの山の 隆起のごとき
濃きみどりあり
                  来嶋靖生

 

(とりとめなき りれきのなかに かのやまの りゅうきの
 ごとき こきみどりあり)

 

意味・・とりとめのないような長い人生の履歴をながめると、
    重要な意味のあることや不可欠なことがある。それ
    は隆起した山のように濃緑色を呈している。そこに
    は、人生の大きな節目や人生を方向づけるような濃
    密に生きた足跡が残っている。

 

    誰も皆、独自の大切な人生を歩み築いていることに
    自負を抱かせる歌です。

 

 注・・とりとめなき=まとまりがない、要領を得ない。
    不可欠=欠くことのできないこと、ぜひ必要なこと。

 

作者・・来嶋靖生=きじまやすお。1931~ 。早稲田大学卒。
    歌人。

 

出典・・杉山喜代子著「短歌と人生」。