壁に書き 襖に書きし 幼児の 汽車の落書き
せんすべのなき
内田守人
(かべにかき ふすまにかきし おさなごの きしゃの
らくがき せんすべのなき)
意味・・幼児が壁や襖に落書きを書いて無邪気に遊んで
いる。その中に汽車の落書きもある。汽車に乗
れる事に憧れているのだろうが、病気が治って
この療養所から帰る事がもう出来ないのに。
昭和10年頃に癩病を患った幼児の治療にあた
っていた医師が詠んだ歌です。当時は癩病は不
治の病であり、療養所に入ると一生出る事が出
来ませんでした。
注・・せんすべのなき=する方法がない。
作者・・内田守人=うちだもりと。1900~1982。長島
愛生学園の癩病の医師。癩患者の明石海人を歌
人に育てる。
出典・・新万葉集・巻一。