いづくにて いかなることを 思ひつつ こよひの月に
袖しぼるらん
建礼門院右京大夫
(いずくにて いかなることを おもいつつ こよいの
つきに そでしぼるらん)
詞書・・寿永二年(1183年)の秋、月明るい夜、風も雲の様子
もことに悲しく感ぜられるのを眺めて、都の外にい
る人(資盛・すけもり)の事に思いはせて詠みました
歌。
意味・・あの人は、どこで、どんな事を思いながら、今夜の
月をながめて、涙くれてているのでしょうか。
華やかな生活をしていた平家も、源氏に追われて都
落ちして、壇ノ浦まで逃げて来た。右京大夫の恋人
の平資盛(すけもり)も都落ちした。この頃に資盛を
思って詠んだ歌です。その後資盛は平家の一門とと
もに入水した。資盛25才、右京大夫は29才であった。
作者・・建礼門院右京大夫=けんれいもんいんうきょうのだ
いぶ。平安時代の後期から鎌倉時代前期の歌人。建
礼門院に仕えた。
出典・・建礼門院右京大夫集。