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病みやすき 夫を置ききし 旅にして 城もみづうみも
われを奪はず
                  行方たつえ

 

(やみやすき おっとをおききし たびにして しろも
 みずうみも われをうばわず)

 

意味・・夫は病気しがちなので、夫は留守で私の一人旅
    となった。日頃世話をしている夫の事が心配で
    景色のいいはずのお城や湖も目には入らなかっ
    た。

 

    日常から解放されて羽を伸ばし、また羽を休め
    るために旅に出かけた。その旅は病気になりや
    すい夫を家に残して出かけてしまった。夫を病
    気にさせないように毎日世話していたので、夫
    が気掛かりだ。それで景色のいいはずのお城も
    湖も目に入らない。


    私はこんなにも夫の事を思っていたのである。
    今回の旅はそれに気がつき、夫を愛していると
    いう確認が出来たのが旅の収穫であった。

 

作者・・行方たつえ=なめかたたつえ。1904~2000。

    日本女子大学卒。今井邦子に師事。

 

出典・・俵万智著「あなたと読む恋の歌百首」。