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今日までは ありと聞きても たのむなよ なほ行く末も
知らぬ命に
                    文貞公 

(きょうまでは ありとききても たのむなよ なおゆく
 すえも しらぬいのちに)

詞書・・元弘二年(1332)世の戦乱によって下総国に遷(うつ)
    された時、都にいる人に申し遣わしました歌。

意味・・今日までのように、世にあると聞いても頼みにして
    くれるなよ。やはりこれからのことはどうなるか分
    らない命なのだから。

    下総に配流される途中に斬られる可能性もあって、
    詠んだ歌です、都の家族に諦めるように諭(さと)し
    ています。
    この年十月に没する。

作者・・文貞公=ぶんていこう。1301~1332。32歳。花山院
     師賢(もろかた)。正二位大納言。元弘の乱の首謀
     者として下総に配流、その地で没。

出典・・新葉和歌集・536。