思ひつつ 経にける年の かひやなき ただあらましの
夕暮れの空
後鳥羽院
(おもいつつ へにけるとしの かいやなき ただ
あらましの ゆうぐれのそら)
意味・・あの人を思い続けて過ごして来た月日の効き
目もなく、またあの人を忘れようと忘れ貝を
拾った効き目も著れてこない。今日もまた逢
える見込みはなく、この恋の将来はどうなる
事かと空しく思い煩(わずら)ううち、気づい
てみれば、早くも夕暮れになってしまった。
注・・思ひ=恋い慕う気持ち。
かひ=「甲斐」と「貝」を掛ける。貝は忘れ
貝を意味して、これを拾うと恋しい人を忘
れる事が出来ると思われていた。
ただ=「直・早くも」と「徒・むなしい」を
掛ける。
あらまし=将来についてあれこれと思いを巡
らす事。
作者・・後鳥羽院=ごとばいん。1180~1239。高倉天
皇の第四皇子。1221年承久の乱の企てが失敗
して隠岐に流される。「新古今和歌集」の撰集
を下命。
出典・・松本章男著「歌帝後鳥羽院」。