1779


 

人もなき むなしき家は 草枕 旅にまさりて 
苦しかりけり
               大伴旅人

 

(ひともなき むなしきいえは くさまくら たびに
 まさりて くるしかりけり)

 

意味・・こうして今帰り着いてみると、居るべき妻が
    いないがらんとした家は、旅にも増して苦し
    くやりきれないことだ。今しみじみそれが分
    かる。

 

    大伴旅人は太宰帥(そち・長官)として着任早
    々妻の大伴郎女(いらつめ)を失った。その後
    京に転任となり、懐かしい故郷の奈良に帰っ
    て来た時に詠んだ歌です。
    奈良に帰って来ても、妻のいない寂寥
(せきり

    ょう)感はいよいよ深まるのみであった。

 

作者・・大伴旅人=おおとものたびと。665~731。728
    年頃太宰帥、同年妻を失う。730年大納言とな
    り上京、翌年没した。

 

出典・・万葉集・451。