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憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは
祈らぬものを          

                  源俊頼

 

(うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしけれ
 とは いのらぬものを)

 

意味・・つれなかった人をどうか私になびかせてくださいと
    初瀬の観音に祈ったのだが。初瀬山から吹き降ろす
    山風が激しく吹きすさぶように、ますます薄情にな
    れとは祈らなかったのに。

 

    ままならぬ恋を詠んだ歌です。
    つれない相手の心がなびくように初瀬の観音に祈った。
    しかし、その思いは通じるどころか、相手はいよいよ
    冷たくあたるようになったというのです。

 

 注・・憂かり=まわりの状況が思うにまかせず、気持ちふさ
     いでいやになること。
    初瀬=奈良県にある地名。長谷寺の11面観音がある。
    やまおろし=山から吹きおろす冷たく激しい風。

 

作者・・源俊頼=みなもととしより。1055~ 1129。金葉和歌
    集の撰者。

 

出典・・千載和歌集・1154。百人一首・74。