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もろともに 眺め眺めて 秋の月 ひとりにならん
ことぞ悲しき
                西行

 

(もろともに ながめながめて あきのつき ひとりに
 ならん ことぞかなしき)

 

詞書・・同行に侍りける上人(しょうにん)、例ならぬこ
    と大事に侍りけるに、月の明かくてあはれなり
    ければ、詠みける。

 

意味・・秋になるといつも、一緒に名月を眺め風流を楽
    しんで来たのに、上人が死に、一人で眺めねば
    ならなくなったのは、まことに悲しいことであ
    る。
    

    志を同じくして、仏道修業に励んでいた上人の
    病気がひどくなった時、月を見て詠んだ歌です。

 

 注・・例ならぬこと=病気になること。
    大事に侍りける=病気が重くなること。
    上人=知と徳を兼ねた僧を尊敬してよぶことば。
     西住上人のこと。西行と在俗以来の終生の友。

 

作者・・西行=さいぎょう。1118~1190。俗名佐藤義清
    (のりきよ)。鳥羽上皇の北面武士であったが23
    歳で出家。「新古今集」では最も入選歌が多い。

 

出典・・山家集・778。