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逢坂の 関の清水に 影見えて 今やひくらむ
望月の駒  
               紀貫之
                 
(おうさかの せきのしみずに かげみえて いまや
 ひくらん もちづきのこま)

 

意味・・逢坂の関のあたりの泉の水に秋の明月の光が
    射していて、その澄んだ水に姿を映しながら
    今引かれていることだろうか。あの望月の牧
    の馬よ。

 

    駒迎えの屏風の絵に添えられた歌です。駒迎
    えは陰暦の8月23日に行われた。

 

 注・・逢坂の関=京から大津へ出る逢坂越えにある
     関所。
    望月の駒=長野県佐久郡にある放牧場の馬。
     ここの貢馬の駒迎えは8月23日。
    駒迎え=東国から朝廷への貢馬を逢坂の関で
     出迎える年中行事。

 

作者・・紀貫之=きのつらゆき。866~945。「古今
    和歌集」の中心的な撰者。「土佐日記」の作者。
 
出典・・拾遺和歌集・17