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大荒れの あとにしみじみ 啼きいづる こほろぎの
こえの あはれさやけき
                   北原白秋

 

(おおあれの あとにしみじみ なきいずる こおろぎ
 のこえの あわれさやけき)

 

意味・・大あらしの過ぎ去ったあとに、しみじみと鳴き
    出す生き残りのこおろぎの声の、ああなんと、
    もの哀しくも清々しく聞こえることだ。

 

    嵐の後に、辛うじて生き残ったこおろぎの声。
    それは命あるものの喜びであり、やがて滅びる
    ものの哀しみであろうか。

 

 注・・大荒れのあと=大嵐の後。
    あはれ=もの哀しい趣きの感動詞。
    さやけさ=清らかさ、清々しさ。

 

作者・・北原白秋=きたはらはくしゅう。1885~19
        42。早稲田大学中退。

 

出典・・歌集「雀の卵」(谷馨著「現代短歌精講」)