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夏は来ぬ 相模の海の 南風に わが瞳燃ゆ
我がこころ燃ゆ
               吉井勇

 

(なつはきぬ さがみのうみの なんぷうに わが
 ひとみもゆ わがこころもゆ)

 

意味・・夏は来た。ここ相模の海の南から吹き寄せる
    潮風を身に受ける時、我が瞳は青春の歓喜に
    燃え、我が心はまた、溢(あふ)れる若い情熱
    の血潮に燃え立つのだ。

 

    万物が燃え立つ夏であり、若人が燃え立つ夏
    です。元気がみなぎる若さを詠んだ24歳の時
    の作です。

 

 注・・夏は来ぬ=「は」は特示の助詞で意を強める。
    相模の海=相模湾に面する海で、ここは鎌倉。
    わが瞳燃ゆ=自分の瞳は青春の歓喜で燃える。
    わがこころ燃ゆ=自分の心は若い情熱に燃え
     立つ。

 

作者・・吉井勇=よしいいさむ。1886~1960。早稲
    田大学中退。

 

出典・・歌集「酒ほがひ」(谷馨著「現代短歌精講」)