今年また李朝の瓶の牡丹かな
滝井考作
(ことしまた りちょうのかめの ぼたんかな)
意味・・今年も庭に牡丹が咲いた。この牡丹の花に
ふさわしい花瓶、李朝の花瓶に今年も活け
て花を愛でよう。
花を愛し、瓶を愛するものにとって、庭に
咲いた牡丹を剪(き)って瓶に活けるのは楽
しみなことである。
牡丹は豪華な花であるだけに、趣味で持っ
ているいろいろな花器から、それに合う瓶
を探すのが大変である。宋の磁州窯のもの、
万暦の赤絵、わが国のものでは唐津もの、
備前もの・・、おのおの一長一短ががあり
難しいが、一番無難に似合うものが李朝も
ので、染付きの瓶ならたいてい間違いがな
い。花の色がどうあっても、それをしっか
り受け止めるだけの気品があるのだ。それ
で、今年も李朝の瓶を取り出したのである。
注・・李朝の瓶=李朝は1312年~1910年まで続い
た朝鮮半島の王朝。その時代に造られた
白磁の花瓶。白い光沢を放ち清らかで美
しい。
作者・・滝井孝作=たきいこうさく。1894~1984。
飛騨高山に生まれる。高山に来た河東碧
梧桐に認められた。日本芸術会員。
出典・・句集「浮寝鳥」。