0876


 



今年また李朝の瓶の牡丹かな

                 滝井考作 

(ことしまた りちょうのかめの ぼたんかな)

意味・・今年も庭に牡丹が咲いた。この牡丹の花に
    ふさわしい花瓶、李朝の花瓶に今年も活け
    て花を愛でよう。

    花を愛し、瓶を愛するものにとって、庭に
    咲いた牡丹を剪(き)って瓶に活けるのは楽
    しみなことである。
    牡丹は豪華な花であるだけに、趣味で持っ
    ているいろいろな花器から、それに合う瓶
    を探すのが大変である。宋の磁州窯のもの、
    万暦の赤絵、わが国のものでは唐津もの、
    備前もの・・、おのおの一長一短ががあり
    難しいが、一番無難に似合うものが李朝も
    ので、染付きの瓶ならたいてい間違いがな
    い。花の色がどうあっても、それをしっか
    り受け止めるだけの気品があるのだ。それ
    で、今年も李朝の瓶を取り出したのである。

 注・・李朝の瓶=李朝は1312年~1910年まで続い
     た朝鮮半島の王朝。その時代に造られた
     白磁の花瓶。白い光沢を放ち清らかで美
     しい。

作者・・滝井孝作=たきいこうさく。1894~1984。
     飛騨高山に生まれる。高山に来た河東碧
     梧桐に認められた。日本芸術会員。

出典・・句集「浮寝鳥」。