春なれば 愉しむごとし 野に土手に 人は草摘む
糧となる草
中村正爾
(はるなれば たのしむごとし のにどてに ひとは
くさつむ かてとなるくさ)
詞書・・大いなる飢え。
意味・・野原や土手には青草が萌え出ている。そこには
人々は三々五々草摘みをしている。いかにも春
の草摘みを楽しんでいる風景なのだが、人々の
摘んでいる草は今日の食糧にしなければならな
い草なのである。
昭和21年の作です。国民一人残らず飢渇感に耐
えていた時代であり、食べられる草なら少しで
も多く摘み取って持ち帰りたいと、生きるため
真剣になっている気持ちを詠んでいます。
作者・・中村正爾=なかむらしょうじ。1897~1964。新
潟師範卒。北原白秋に師事。
出典・・中村正爾歌集(東京堂出版「現代短歌鑑賞辞典)。