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我が妻も 絵に描き取らむ 暇もが 旅行く我は
見つつ偲ばむ
                       物部古麻呂
          
(わがつまも えにかきとらん いつまもが たびゆく
 あれは みつつしのばん)

 

意味・・我が妻をせめて絵に描きうつす暇があったらなあ。
    はるばると辺土の防備にゆく自分は、その似顔絵
    を見ながら思い出したいのだ。

 

    天平勝宝(755年頃)の時に坂東諸国(関東地方)から
    筑紫(九州福岡)に行く防人の歌で、妻を残して慌
    (あわただ)しく旅立たねばならぬ嘆きです。

 

 注・・暇(いつま)=暇(いとま)の訛り。

 

作者・・物部古麻呂=もののべのふるまろ。生没年未詳。
    防人。

 

出典・・万葉集・4327。