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ゆく水の ざれ事きかす 神の笑まひ 御歯あざやかに
花の夜あけぬ
                        与謝野晶子

 

(ゆくみずの ざれごときかす かみのわらまい みは
 あざやかに はなのよあけぬ)

 

意味・・春の夜の明け方、まだ一面闇に覆われる野、その
    野中を流れる一条の小川、その小川がしゃべりか
    ける、たわいもない冗談に耳を傾けていらっしゃ
    った春の夜の神は、その面白さに思わず口を開い
    てお笑になりました。夜目にも見えるそのきれい
    な歯並びと爽快なほどのあざやかな白さ。その印
    象を残しつつこの春の夜を司る神が去って行かれ
    ると、夜は白々と明け初めて朝を迎えました。
    すると、そこにはあざやかな百花繚乱の美しい春

    の野の姿が現れてきました。

 

    美しく至福に満ちた、青春の恋の夜明けを物語の
    比喩で歌っています。

 

作者・・与謝野晶子=よさのあきこ。1878~1942。堺女学
    校卒。与謝野鉄幹と結婚。「明星」の花形となる。

 

出典・・歌集「みだ髪」。