母にそひ いまはたなにか 思ふべき 今日は紫蘇つみ
梅実つけにけり
潮みどり
(ははにそい いまはたなにか おもうべき きょうは
しそつみ うめつけにけり)
意味・・紫蘇をつみ梅を漬けて今日は終わった。こうして
母に添って暮らし、今はそれ以上になにを思うべ
きだろうか。
大正7年の作です。「母にそひいまはたなにか思
うべき」に心の揺れがこもっています。農村の娘
として母のかたわらで手伝って暮らす平凡な暮ら
し以外に何も思うまいとする心と、その暮らしに
疑問を抱く心とが交錯しています。
この年に結局作者は長野より上京しています。
注・・はた=その上にまた。
作者・・潮みどり=うしおみどり。1897~1927。30歳。
牧水の妻の若山喜志子の妹。牧水に師事。
出典・・潮みどり歌集(東京堂出版「現代短歌鑑賞事典」)