2009


 


母にそひ いまはたなにか 思ふべき 今日は紫蘇つみ
梅実つけにけり

                         潮みどり

 

(ははにそい いまはたなにか おもうべき きょうは
 しそつみ うめつけにけり)

 

意味・・紫蘇をつみ梅を漬けて今日は終わった。こうして
    母に添って暮らし、今はそれ以上になにを思うべ
    きだろうか。

 

    大正7年の作です。「母にそひいまはたなにか思
    うべき」に心の揺れがこもっています。農村の娘
    として母のかたわらで手伝って暮らす平凡な暮ら
    し以外に何も思うまいとする心と、その暮らしに

    疑問を抱く心とが交錯しています。
    この年に結局作者は長野より上京しています。

 

 注・・はた=その上にまた。

 

作者・・潮みどり=うしおみどり。1897~1927。30歳。

    牧水の妻の若山喜志子の妹。牧水に師事。

 

出典・・潮みどり歌集(東京堂出版「現代短歌鑑賞事典」)