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思ひあまり そなたの空を ながむれば 霞を分けて
春雨ぞ降る
                          藤原俊成

 

(おもいあまり そなたのそらを ながむれば かすみを
 わけて はるさめぞふる)

 

意味・・恋の思いに堪えかねて、あなたが住んでいる
    方角の空を眺めていると、霞を分けるような
    感じに春の雨が降っている。

 

    恋人の住んでいる方角を眺めても、霞や春雨が
    邪魔して見えない。思いが届くようにはっきり
    とした景色を見たいのに。

 

 注・・思ひあまり=恋しい思いのとめようもない様子。
    そなた=思う人の住んでいる方角。

 

作者・・藤原俊成=ふじわらのとしなり。1114~1204。
    正三位・皇太后宮大夫。「千載和歌集」を撰進。

 

出典・・新古今和歌集・1107。