をみなにて 又も来む世ぞ 生まれまし 花もなつかし
月もなつかし
山川登美子
(おみなにて またもこんよぞ うまれまし はなも
なつかし つきもなつかし)
意味・・また来ん世には、再び女として生まれて来た
い。今日まで生き長らえて来た思い出の中に
は、花もなつかしいし、月もなつかしい。や
はり来世も女に生まれて来よう。
27才の時、肺結核で長い療養中に詠んだ歌で
す。花鳥風月を詠んでいたあの頃の元気な頃
が思いだされて懐かしい。
「又来む世ぞ」と詠んでいる心の底には死を思
っていたのだろう。なんとも言えない悲哀さ
と、あきらめ切れない苦痛さが籠められてい
る。
注・・花もなつかし月もなつかし=花鳥風月を詠ん
でいた頃の、元気であった時代の思い出で
す。
作者・・山川登美子=やまかわとみこ。1879~1909。
29歳。日本女子大学病気中退。与謝野鉄幹創
刊の歌誌「明星」の初期を晶子と共に飾る。
出典・・明治39年1月号「明星」(永田義直著「短歌鑑
賞入門」)