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  はても見えぬ
  真っ直ぐの街を あゆむごとき
  こころを今日は 持ちえたるかな
                              石川啄木

 

(はてもみえぬ まっすぐのまちを あゆむごとき こころを
 きようは もちえたるかな)

 

意味・・はても見えず真っ直ぐに続いている街の通りを
    歩いていくような、すべての気がかりを忘れ、
    周囲に何の気にもかけず、清々しい気持ちを今
    日は不思議に持つことが出来た。

 

    はても見えぬ・・・日頃は色々の煩(わずら)い
    事
に心がふさがれていたのだが、その心ものび

    のびと開かれた気持ちになったことを言って
    ます。

    真っ直ぐの街・・・気が滅入っていない状態を示
    しています。
    今日は・・・「は」は限定を表している。日頃
    持つ事の出来ない気持ちを、今日はどうしたわ
    けか、不思議に持ち得た、ということです。

 

    ある日、何の煩いもなく心地の良い日が過ごせ
    たと詠んだ歌です。

 

 注・・はて=果て。なりの果て、落ちぶれた状態。

 

作者・・石川啄木=いしかわたくぼく。1886~1912。
     26歳。盛岡尋常中学校中退。

 

出典・・一握の砂。