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降る雪や 明治は遠く なりにけり 
                 
                 中村草田男
        
(ふるゆきや めいじは とおくなりにけり)

意味・・雪が盛んに降っている。その雪に現実の
    時を忘れ、今が二十数年前の明治のころ
    そのままのような気持になっていた所、
    ふと現実に帰り、しみじみ明治は遠くな
    ってしまったと、痛感するものだ。

      昭和6年の作です。
    雪が降りしきる中、20年振りに母校の

    小学校付近を歩いていた。母校は昔のま

    まと変わらないなあと思いつつ、その当

    時の服装、黒絣の着物を着て高下駄を履

    き黄色の草履(ぞうり)袋を下げていたの

    を思い出していた。その時、小学校から

    出て来たのは、金ボタンの外套を着た児

    童たちであった。現代風の若者を見ると、

    20年の歳月の流れを感じさせられる。

    そして明治の良き時代は遠くになってし

    まったものだ。

作者・・中村草田男=なかむらくさたお。1901

    ~1983。東京帝大国文科卒。成蹊大学

    名誉教授。高浜虚子に入門。。

 

出典・・句集「長子」(笠間書店「俳句の解釈と

    鑑賞事典」)