綿入りの 縫い目に頭 さし入れて ちぢむ虱よ
わが思ふどち
橘曙覧
(わたいりの ぬいめにかしら さしいれて ちぢむ
しらみよ わがおもうどち)
意味・・綿入れの着物の縫い目に頭をさしこんで縮まっ
ている虱よ、私の親愛な仲間だ。
冬になると貧乏であまり着替えもなく綿入れを
着たきりでいるために、虱がわくのだが、虱は
きらわれ者であることを自分で知っていて、小
さくちぢこまっている。自分も家業を捨て貧し
い生活をしてちぢこまっている身だから、お前
は親しい仲間だ、と虱をあわれんでいます。
注・・どち=親しい人、仲間。
作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1868。紙商
の長男。早く父母に死別。家業を異母弟に譲り
隠棲。福井藩主から厚遇された。
出典・・岩波文庫「橘曙覧全歌集」。