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谷川の 岩間をわけて ゆく水の をとにのみやは
聞かむと思ひし
                      平兼盛

 

(たにがわの いわまをわけて ゆくみずの おとに
 のみやは きかんとおもいし)

 

意味・・奥深い谷の岩の間をぬって流れる川、その川

    はここからは見えないが 音だけをたよりにそ

    の姿を瞼に浮かべよう。

 

    逢えない愛しい人を谷川の音にたとえ、人か

    らの評判を聞くだけでなく、あなたに逢って

    話もしたい、と逢瀬を求めた歌です。

 
 注・・をと=「音」に「うわさ・評判」を掛ける。

 

作者・・平兼盛=たいらのかねもり。?~990。駿河
    守、従五位上。三十六歌仙。

 

出典・詞花和歌集・191。