鉛製活字
その手もて 飯食ふことの 悲しさを 知りにたりける
少年職工
窪田空穂
(そのてもて めしくうことの かなしさを しりに
たりける しょうねんしよっこう)
詞書・・少年の植字職工。
意味・・自分の手で働いて生活することの、いかに難
しく、つらく、また悲しいものであるかを知
った少年職工よ。
自らの手によって生活しなければならなくな
った時、生きる事のいかに困難であるかを知
った少年職工の悲哀に心を寄せ、同情してい
ます。
注・・悲しさ=肉体的・精神的・物質的な、困難・
辛苦・悲哀を表した「悲しさ」。
知りにたりける=「に」も「たり」も完了を
表す助動詞。「ける」は詠嘆を表す助動詞。
作者・・窪田空穂=くぼたうつほ。1877~1967。早
稲田大学卒。早稲田大学教授。
出典・・学灯社「現代短歌精講」。