0012

                 鉛製活字
 

その手もて 飯食ふことの 悲しさを 知りにたりける
少年職工
                        窪田空穂

 

(そのてもて めしくうことの かなしさを しりに
 たりける しょうねんしよっこう)

 

詞書・・少年の植字職工。

 

意味・・自分の手で働いて生活することの、いかに難
    しく、つらく、また悲しいものであるかを知
    った少年職工よ。

 

    自らの手によって生活しなければならなくな
    った時、生きる事のいかに困難であるかを知
    った少年職工の悲哀に心を寄せ、同情してい
    ます。

 

 注・・悲しさ=肉体的・精神的・物質的な、困難・
     辛苦・悲哀を表した「悲しさ」。
    知りにたりける=「に」も「たり」も完了を
     表す助動詞。「ける」は詠嘆を表す助動詞。

 

作者・・窪田空穂=くぼたうつほ。1877~1967。早

    稲田大学卒。早稲田大学教授。

 

出典・・学灯社「現代短歌精講」。