たのしみは すびつのもとに うち倒れ ゆすり起こすも
知らで寝し時
橘曙覧
(たのしみは すびつのもとに うちたおれ ゆすり
おこすも しらでねしとき)
意味・・冬の午後、火鉢に身を寄せ暖を取っていたら
だんだん身体が暖かくなって来て、急に眠気
がおそって来た。そのままごろんと横になる
と「ほらあなた風邪を引きますよ」とかなん
とか。妻は心配げにゆすり起こそうとするの
だが、その声はみるみるうちに遠ざかり、思
わず深く寝入ってしまった。こんな時は何と
もいえず楽しい気分になる。
今で言えばこたつに入っていて寝込む感じで
す。
小さな喜びや楽しみを発見して幸せを感じて
います。
注・・すびつ=炭櫃。いろり、据え付けた大型の角
火鉢。
作者・・橘曙覧・・=たちばなあけみ。1812~1868。
早く父母に死に別れ、異母兄弟に家業を譲り
隠棲。福井藩の重臣と交流。
出典・・独楽吟。