ひと夜寝て 憂しとらこそは 思ひけめ 浮き名立つ身ぞ
わびしかりける
                                 詠人知らず
              
(ひとよねて うしとらこそは おもいけめ うきな
 たつみぞ わびしかりける)

意味・・ただ一夜共寝をして、きっと私のことを嫌だと
    思ったのだろう。あの人はその後訪れて来ない
    が、一夜だけで評判が立った自分の身を思うと
    わびしいことである。

    「物名歌」で、十二支の前半の「子・丑・寅・
    卯・辰・巳」の名が入っています。

 注・・寝て=「寝」に「子」を掛ける。
    憂しとら=「憂し・とら」に「丑・寅」を掛ける。
     「ら」は語調を整える接尾語。
    けめ=「けむ」の已然形。・・したのだろう。
    浮き名立つ身=「浮・立つ・身」に「卯・辰・巳」
     を掛ける。

 

出典・・拾遺和歌集・429。