いろいろのこと思い出す桜かな
(さまざまの事思い出す桜かな)   

               芭蕉(笈の小文)

(いろいろの ことおもいだす さくらかな)

この句の「桜かな」の部分を「つつじかな」、「チュウリップ」
「赤いばら」などと置き換えてみると、やはり「桜かな」がいい
ですね。

入学式の記念写真、桜の名所に行った事、あの人もいて楽し
かった花見など、いろいろなことが思いだされます。

「あの人」で思い出すのが次の句です。

目に嬉し恋君の扇真白なる

  
               蕪村(蕪村全句集・1298)

(めにうれし こいぎみのおうぎ ましろなる)

 注・・恋君(こいぎみ)=女性から見て男性の恋人をさす

意味・・大勢が一座する場所に、ひそかに思いをよせる男性
    がいる。その人は真っ白な扇を手にしてゆったりと
    風をいれている。いかにも品格のある、清潔な人柄が
    しのばれる、との句意です。

    やや離れた場所から、相手の姿をほれぼれと頼もしく
    眺めている女性の心情を詠んでいます。