♪ さみだれの注ぐ山田に 早乙女が 裳裾ぬらして
玉苗植うる 夏は来ぬ ♪

これは、唱歌で有名な「夏は来ぬ」です。

田植えしている早乙女の姿や、整然と苗が植えられた
田を見ると、やぁ今年も、若葉が薫るすかすがしい
夏が来たなぁと感じます。

この歌の原歌は。

さみだれの注ぐ山田に賎の女が裳裾ぬらして玉苗植うる
                    佐々木信綱

(さみだれの そそぐやまだに しずのめが もすそ
 ぬらして たまなえううる)

 注・・さみだれ=五月雨、梅雨のこと
    山田=山間の田
    賎(しず)の女=身分のいやしい女
    玉苗=金銀玉に匹敵する大切な苗

この和歌は、田植えをする賎の女の姿を詠んでいます。

では、賎の女がどんな気持で田植えをしているのでしょうか。
その中にこんな人もいます。

離別れたる身を踏込んで田植えかな  与謝蕪村

(さられたる みをふんごんで たうえかな)

 注・・離別(さら)れたる=去られたる、離婚されて
    踏込(ふんご)んで=踏み入れて

意味・・田植えは共同作業である。離別された女が
    先夫の家の田植えの手伝いにやって来た。
    恥ずかしいやら、憎いやら、複雑な気持を
    押し切って泥田の中に足を踏み入れて、田植えを
    する、との句意です。

    あわれな農村の女性の姿を描いていますが、
    屈辱に耐え抜いて生きていく素晴しい女性の姿
    として詠んだ句です。