世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は
のどけからまし
                 在原業平

(よのなかに たえてさくらの なかりせば はるのこころは
 のどけからまし)

意味・・もしこの世の中に全く桜がなかったなら、春の人の
    心はどんなにのどかであろうか。

    春は本来のどかな季節であるが、桜を愛するあまり、
    咲くのを待ち焦がれ、散るのを惜しみ、また雨に
    つけ風につけ、気にかかって落ち着かないという気持
    を、反実仮想の機知をきかせて詠んでいる。

作者・・在平業平=ありひらのなりひら。825~880。従四位上・
     蔵人頭。

出典・・古今和歌集・53。