世の中を 何にたとへむ 朝ぼらけ 漕ぎ行く舟の
跡の白波
           沙弥満誓(さみのまんぜい)
           (拾遺和歌集・1327)

(よのなかを なににたとえむ あさぼらけ こぎゆく
 ふねの あとのしらなみ)

意味・・この世の中を何にたとえようか。夜明け方に
    漕ぎ出して行く舟の跡に立つ白波のように、
    立ってはすぐに消え行くはかないものだ。

    人の噂も75日ということもある。
    良きにしろ、悪しきにしろ、嬉しいこと苦しい
    ことも思い出になり、そしていつかは消えてな
    くなる。

 注・・世の中を何にたとへん=無常な世を比喩で示そ
     うとしたもの。
    朝ぼらけ=夜明け方の者がほのかに見える時分。
     春の「曙」に対して秋・冬の季節に用いる。
    漕ぎ行く舟の跡の白波=舟の航跡はすぐに消える。

作者・・沙弥満誓=生没年未詳。美濃守・従四位下。
     721年に出家。大伴旅人・山上憶良らと親交。