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駿河路や花橘も茶の匂ひ
                   芭蕉
               
(するがじや はなたちばなも ちゃのにおい)

意味・・江戸から東海道を通って、駿河国あたりに来ると、
    この街道筋は暖かい地方なので、白い橘の花があ
    ちらにもこちらにも咲いてよい香りを放っている。
    だが、それにもましてこの地方は製茶が盛んで、
    さすが香気の高い橘の花までも、茶の匂いに包み
    こまれてつまうようだ。

 注・・駿河路=駿河(静岡県)を通る東海道筋。
    花橘=橘の花を賞美している語。橘は一種の蜜柑。

作者・・芭蕉=1644~1695。「奥の細道」「野ざらし紀

    行」。

 

出典・・句集「炭俵」(小学館「松尾芭蕉集」)。

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いつの日か昔語りに五月闇
                 恵好灯

(いつのひか むかしかたりに さつきやみ)

意味・・梅雨時の闇のように、つらい日々を送っていたと
    しても、いつかは必ず、昔話になって語り合う事
    が出来ます。生き続けましょう。

    参考歌です。
   「ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと
    見し世ぞ 今は恋しき」  (意味は下記参照)

 注・・五月闇=五月雨(梅雨)の頃、どんよりと暗い昼や
     月の出ない闇夜。

参考歌です。

ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しとみし世ぞ
今は恋しき                  
                    藤原清輔          

(ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみし
 よぞ いまはこいしき)

意味・・この先、生きながらえるならば、つらいと感じている
    この頃もまた、懐かしく思い出されることだろうか。
    つらいと思って過ごした昔の日々も、今では恋しく
    思われることだから。

     今の苦悩をどうしたらよいものか・・

 注・・憂し=つらい、憂鬱。

作者・・藤原清輔=ふじわらのきよすけ。1104~1177。

出典・・新古今和歌集・1843、百人一首84。


 

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               霧にけむる那智の滝
 

滝の上の 三船の山に 居る雲の 常にあらむと 
我が思はなくに
                 弓削皇子
                
(たきのうえの みふねのやまに いるくもの つねに
 あらんと わがおもわなくに)

 

意味・・滝の上の三船山には、あのようにいつも雲が
    かかって見えるが、私達はいつまでもこの世
    にあろうとは思えない。それが悲しい。

 

    今の良き状態が長く続くとは思われない、と
    戒めた気持を詠んでいます。

 

 注・・三船の山=奈良県吉野の宮滝付近にある山。
    あらんと=生きているだろうと。
    なくに=・・ないのに、・・ないのだから。

 

作者・・弓削皇子=ゆげのみこ。699年没。30歳前
    後。天武天皇第六皇子。
 
出典・・万葉集・242。

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山の端に あぢ群騒ぎ 行くなれど 我は寂しゑ

君にしあらねば

                 舒明天皇
              
(やまのはに あじむらさわぎ ゆくなれど われは
 さぶしえ きみにしあらねば)

意味・・山際をあじ鴨が群れ鳴いて、騒ぎ飛行くように、
    多くの人が通り過ぎて行くけれども、私は寂しゅ
    ございます。その人々はあなたではありません
    から。

 

    亡き人を恋慕った歌です。

    この歌の長歌です。

    広い国土には人がいっぱいに満ち満ちて、まるで

    あじ鴨の群れのように、乱れて行き来するけれど、

    どの人も私のお慕いるあの方ではないものだから、

    恋しさに、昼は昼とて暗くなるまで、夜は夜明け

    まであなたを思い続けて、眠れないままにとうとう

    一夜を明かしてしまった。長いこの夜なのに。

    作者ははっきりせず、女性が詠んだ歌といわれ
    ている。

 注・・あぢ=小型の鴨であじ鴨。
    ゑ=嘆きをこめた感動を表す助動詞。

作者・・舒明天皇=じょめいてんのう。34代天皇。

 

出典・・万葉集・486。

 

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ほととぎす 空に声して 卯の花の 垣根も白く
月ぞ出でぬる
                 永福門院

(ほととぎす そらにこえして うのはなの かきねも
 しろく つきぞいでぬる)

意味・・ほとどぎすが空で一声鳴いて過ぎ、地上には
    卯の花が垣根に白く咲きこぼれている。折し
    も垣根の向こう、中空を見ると、月がちょう
    ど出てきた所である。

    この歌を基にして佐々木信綱は「夏は来ぬ」
    の唱歌を作っています。

    卯の花は初夏の花で、そのころほととぎすも

    ようやく鳴き始めます。

 

    「夏は来ぬ」 

    作詞 佐々木信綱 作曲 小山左之助

     https://youtu.be/XQm1qk53suc

 

    卯の花の匂う垣根に 

    時鳥早やも来鳴きて

    忍び音もらす 

    夏は来ぬ

作者・・永福門院=えいふくもんいん。1271~1342。
    京極派の代表歌人。

出典・・玉葉和歌集。