3月10日、定例会の最終日に本会議で発言した、2023年度予算に対する反対討論の内容をご紹介します。一生懸命考えたのでぜひ読んでください。

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インクルーシブな練馬をめざす会を代表して、2023年度一般会計、国民健康保険事業会計、介護保険会計、後期高齢者医療会計の予算に反対の立場で討論を行います。

 

長期化するコロナ禍に追い打ちをかけるように物価上昇が止まりません。

また、コロナが5類に移行しても、重症化リスクの高い高齢者の介護現場での対応には慎重さが求められ、感染拡大時の医療逼迫といったリスクは課題として残されたままです。

特例貸付の返済が始まった今、返済が困難な人、不安を抱える人がとり残されない体制の整備が急がれます。

今、住民の抱える生活課題は非常に多様です。ひとつの施設を作るだけでは、ひとつの施策を実施するだけでは対応できない多岐にわたる課題の解決を図ることが必要です。

 

私たちが取り組むべきと考えている具体的な課題をいくつかあげます。

 

ひとつには、生活困窮者支援。生活困窮者支援は今、とても重要な局面にあります。

特例貸付の返済が始まる中、利用しやすい生活困窮者支援の制度の確立と、相談しやすい場づくりが急務の課題なのです。

約1万世帯の区民が特例貸付を利用していますが、返済の免除の対象範囲が狭いので、免除の対象にはならなくても返済が困難であるという人が多くいることが懸念されています。そうした方々が、誰にも相談できずに孤立してしまったり、貸付の実施主体でもある社会福祉協議会の生活困窮相談を利用しづらくなるといったことが起こらないように工夫をすることが、今、非常に重要な課題です。今、十分な対応をしなければ、特例貸付をきっかけとして生活困窮や孤立の問題が長く続いてしまうかもしれない。あとあと大きな社会的課題となることを懸念しています。

貸付の中で見える相談者の生活課題をふまえ、フードバンクなどのとりくみや住まい探しの支援など、新たな支援策を講じた地域もありますが練馬区ではまだそのようなとりくみは不十分です。

社会福祉協議会と連携し、相談をためらう人が立ち寄りやすい、相談しやすい場づくりに早急にとりくむ必要があります。

 

2つめの課題として、性的マイノリティへの支援。

練馬区は、パートナーシップ条例の策定について、「現実的な効果が不明」として後ろ向きな姿勢です。そして、都の制度に合わせた最低限度の対応を「不便の軽減」のために実施するとしています。でも、公的機関がすべきことは、「不便の軽減」にとどまらず、「権利侵害されてきたマイノリティの権利を保障すること」です。

区として主体的に、性的マイノリティの当事者の権利保障を進めるべきです。

 

3つめの課題はヤングケアラー支援です。

練馬区はヤングケアラー調査をふまえ、来年度、こどもが相談しやすいしくみづくり、子ども家庭支援センターの連携体制の充実などを進めるということですが、相談した後に課題解決をするための方策は不十分です。

ヤングケアラーの問題の背景には、ケアが必要な人がいても家事は家族が責任を持ってやることが前提となっている介護・福祉制度の脆弱さがあります。介護保険制度も、障害者制度も、基本的に家族がいる場合、家事援助のヘルパーが使えません。家族をケアしながらの家事負担が重くなっている家の状況を見て、それを支えようとするこどもに負荷がかかっている。この問題を解決するには、家族主義を基本とした介護・福祉制度の是正と、ケアが必要でも障害者手帳を持たず、介護保険の対象にもならない若い世代を社会的にサポートする独自のしくみが必要です。ヤングケアラーの問題を親子の関係性という問題としてではなく、社会の支援の脆弱性という視点からとらえて、支援を拡充する必要があります。

 

そして、こどもの施策はすべて、こどもの権利を保障するという観点から取り組むべきです。こどもが安心して育つことができる環境を保障するために、保育園の人員体制の強化は必要ですし、すべてのこどもの義務教育の無償化を保障するために、すべてのこどもの学校給食費の無償化は必要。

すべての施策を、人の生きる権利を保障するという観点からとらえるべきです。

 

こうした深刻な課題が多くある一方で、練馬区は「ねりま推し」として、朝ドラやハリーポッターを契機に練馬区を盛り上げることに予算を投じています。

今、練馬区が公費を投じて行うべきことは、このような偶然の民間のとりくみに乗って練馬区をPRすることではありません。また、様々な懸念の声を押し切って進めようとする美術館の大規模改築に多額の費用を費やすことも疑問です。

 

練馬区に暮らす人が「ここに住んだから、安心して生きていくことができる」と思える基盤を率先して作ることで、練馬区の良さを多くの人に知ってもらうことこそが行政が優先して行うべきことだと私たちは考えています。

 

人の生活への支援を「バラマキ」としてとらえるのではなく、だれもが練馬区で安心して自分らしく生きる権利を保障するという捉え方をする、そんな区政を私たちは目指したい、と申し上げて、反対討論とします。