11月25日から12月9日までの予定で、今年最後の区議会定例会が行われています。

 

昨日、補正予算の審査がありました。今回、私の会派からはやない克子さんが質問をしました。その内容をご報告します。

 

今回の補正予算は、歳入としては国からの交付金と区の財政調整基金からの繰り入れが中心。

歳出は区の職員などが使う抗原検査キットの購入、コロナのワクチンの職域接種の委託料、そして国の交付金を活用して区が独自に低所得の子育て家庭への臨時給付金を行うというものでした。補正予算全体の項目のボリュームとしてはあまり大きくはないものです。

 

国の制度に「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」という、自治体の取り組みに対して国から交付金を出すというしくみがあります。そこに9月に物価上昇への対応として「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」というものが創設されました。国の資料はこちらからご覧いただけます。こちらの資料に、この交付金の活用方法として推奨メニューが示されており、例えば住民税非課税世帯以外にも給付金を支給することや福祉事業所への光熱費の補助などが示されました。それらは練馬区では10月の補正予算の時にすでに入れているので、今回は子育て家庭への支援にしたということのようです。具体的には、児童扶養手当を受給している世帯、または家計急変世帯に対し、こども1人あたり10万円を給付するということです。

 

これに対して、私たちの会派では、課題がいくつかあると考えて指摘しました。

ひとつには、コロナ禍に加えて物価上昇という、生活に悪影響を与える情勢が長引いている中で、単発で給付金を支給することが果たして長期的に見て人の暮らしを支える生活困窮者支援といえるのだろうか?という課題です。

もちろん、生活困窮状態にあれば、臨時的に5万円、10万円という収入があれば助かるでしょう。でも、例えば毎年何月には必ず給付がある、といった見通しが立つなら良いですが、そうではない支援を繰り返すことで果たして抜本的な問題解決になるのだろうかということです。

しかし、この交付金は、9月に創設が発表され、なにに活用するかの締め切りが10月末まででした。そして、今年度中に使わなければならないのです。上記の資料で国が示している推奨メニュー以外の活用も可能ですが、その場合、計画を提出しなければならないとも書かれています。そうなると、この短期間で自治体としてできることは実質的に給付金くらいしか難しいということになります。このような、場当たり的としか言えない国の支援策の是正を求める必要があるのではないでしょうか。

 

ふたつめには、この交付金を活用した給付金は、生活保護世帯も対象になりますが、現段階では収入認定され、控除額は8千円であるという説明がありました。つまり、例えば10万円の給付があっても、その世帯にとっては8千円分のメリットしかないということです。

生活保護は、年金など他の施策を活用しても不足する最低生活費を保障するしくみです。ですので、働けるようになった場合も一定の控除額以上は生活保護費が引かれることになります。

しかし、コロナ禍で行われた国の給付金は収入認定されませんでした。

 

生活保護は、2013年に大幅な引き下げが行われました。当時、物価が下落していることを理由に引き下げが行われたのですが、そもそもその判断基準が間違っていた(物価上昇が起こっていた2008年と比較して物価下落しているということを理由に引き下げが決められていることなど)として、違憲であると訴える訴訟が起こされており、現在複数の違憲判決が出ています。

コロナ禍による衛生用品等の支出の増加、さらに物価上昇が起こっている中、生活保護受給世帯は、そもそもの引き下げの根拠に課題が指摘されている生活保護費で生活しているのが現状なのです。

だから、コロナ禍や物価上昇を理由に給付金を支給するならば、それらの理由で保護費の引き上げが行われていない生活保護世帯について収入認定しないのは合理的な判断であろうと思います。しかし、なぜ今回、自治体で行う給付金は収入認定されるのか。区は、収入認定除外額を8千円からもっと増やせないかと国に問い合わせをしているということですが、今回の議会では、「生活保護費はほかの施策を活用したうえで…」という、先ほど私が書いたような説明をして、必ずしも収入認定されることが不合理ではないという説明をしました。でも、それでは今までの国の給付金の取扱いはなんだったのか。整合性がないです。

国に対しては収入認定をしない対応を求めるべきこと、そして生活保護費の引き上げを国に求めるようにと述べました。

しかし、生活保護費の引き上げを求めるべきことについては、共産党さんへの答弁で「係争中のことについて意見は述べない」という見解を示しており、いったいだれの視点に立った行政運営をしているのか、疑問に感じました。

 

また、生活保護受給世帯がこの給付金を受け取った上で収入認定して保護費を引くのか、給付金そのものを辞退するのかといった方法の選択は当事者にゆだねられます。そこはケースワーカーがフォローするということですが、例えば障害があってお金のことについての判断が難しいなどがあった場合、本人に決断がゆだねられる以上、本当に最善の方法をとれるのか、またそのためのケースワーカーの新たな業務負担という課題もあると思います。

 

3つめの課題としては、今回の対象者以外にも生活困窮している人はいるのに、なぜ、子育て世帯というところに絞らなければならないのか、ということです。以前も課題を指摘しましたが、9月末での特例貸付の終了、また来年1月からの返済開始を前にして、返済免除の対象も狭い中で、返済が困難で破産手続き等の対応を進める人も増えているという指摘もあります。私は、特例貸付の免除対象にもならず、かといって返済が困難で、何かしらの救済策につながればいいけれど、返済手続きをせずに放置してしまった人が、困窮していても「貸付の返済から逃げているから」ということを負い目に感じて、これからの支援を求めづらくなる(例えば生活保護の申請も躊躇する)といったことが起きはしないかということも心配します。

このような課題もある中、もっと幅広い対象を想定した支援策を検討すべきだったのではないでしょうか。同じ困窮する人であっても、条件によって分断が起こることによって、感情的な分断も進み、社会を疲弊させることにもなるのではないだろうか。

 

国の制度に多くの課題がある中、今できる活用策を取らざるを得ないということで、補正予算案に反対はしませんでしたが、もっと長期的な視点に立った根本的な生活困窮者支援を国に求め、区も主体性を持って対応していくべきであると思います。