2022年2月24日の予算特別委員会・保健福祉費の質疑で質問したのは、精神障害のある人の地域包括ケアについてと障害のある人のグループホームについて。

 

今回は精神障害のある人の地域包括ケアについての質疑の内容をご紹介します。太字は要約です。

 

国が進めている「精神障害にも地域包括ケアを」という流れの中で、区が実施した、精神科への長期入院患者の調査の実施状況は?また、来年度設置予定の関係機関会議の役割は?

(かとうぎ桜子)

精神保健対策費に関連して、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの検討状況について伺います。

介護分野で進められてきた地域包括ケアシステムを、精神障害のある人にも広げていこうという検討が国で進められています。

課題としては、

・精神科への長期入院を減らして、地域移行を進めるための体制をつくること

・精神科病院において地域で暮らす精神障害者への支援体制をつくること

・精神障害のある人が地域の中で孤立することなく安心して暮らせる体制をつくること

などがあります。

練馬区も、その流れに沿って検討を進めていると思いますが、その状況について伺いたいと思います。

 

アクションプランには、精神科病院の長期入院患者等の実態調査を行い、関係機関会議で検討すると書かれていますが、長期入院患者の調査の実施状況をお聞きしたいのが1点です。

また、来年度設置予定の関係機関会議の目的と、構成メンバーなど、この会議はどのような役割を果たすものなのかお聞きします。

 

1年以上入院していた人は、2020年度147名、2021年度155名。60歳以上が8割、統合失調症が7割。病院が退院可能としている方は約6割、退院を希望している患者は約3割。

(保健予防課長)

令和2(2020)年度と令和3(2021)年度に、区内3病院を対象に1年以上入院している患者数や、年代、疾患名、退院に向けた本人の意志などについて調査しています。

令和2年度は1年以上入院していた方が147名でしたが、令和3年度は155名となっております。

1年以上入院している方の年代は、60歳以上が8割以上を占め、統合失調症の方が約7割。

病院が退院可能としている方は約6割である一方で、退院を希望している患者は全体のおよそ3割でありました。

 

関係機関会議は、長期入院患者の退院促進、地域移行、地域生活への支援を目的とし、精神科病院の看護師、ソーシャルワーカー、地域の訪問看護ステーション、グループホーム、障害者地域生活支援センター、中部総合精神保健センターなどが参画予定。

アクションプラン戦略計画7、精神障害者等への支援の充実の中の、関係機関会議では、精神科病院長期入院患者等の退院促進に係る地域への移行や、地域で安定した生活に向けての支援について検討することを目的としています。

構成メンバーは、精神科病院の病棟看護師やソーシャルワーカー、地域の訪問看護ステーション、グループホーム、障害者地域生活支援センター、都の中部総合精神保健福祉センターなどを予定しています。

退院促進には、本人を中心に、送り出す病院と受入れる地域の支援者が、多職種で対応する必要がございます。

今後、精神障害者が入院患者に自らの経験を伝えるための病院訪問や、入院中からの地域サービスの体験利用なども織り交ぜながら、円滑に地域生活に移行していけるよう、個別事例に即した具体的な支援策について検討してまいります。

 

2024年度医療計画改定で変わってくるところも大きそうだが、区としては医療計画への対応はどのように行うか。

(かとうぎ桜子)

長期入院されている方は高齢の方も多いということ、また、希望している方の割合はあまり多くないというご説明でした。

長く入院されていることによって、地域生活のイメージがつきづらいということは大きいのかと思います。

入院中のスタッフの方、また、当事者の方に、地域移行について具体的なイメージができるようなサポートが必要になってくるかと思います。

 

医療機関に関わる部分については、2024年度に改訂される医療計画で示されるものも多くなりそうです。

そのような制度改定への対応については、都や医療機関との連携の下に、区としての役割の整理が必要になるかと思います。

この医療計画に合わせた対応について、区としてはどのように取り組むお考えか、お聞きします。

 

現在行われている国の検討会と整合をとりながら支援を進化させていく。

(保健予防課長)

国は、令和3年(2021年)10月に開始した「地域で安心して暮らせる精神医療福祉体制の実現に向けた検討会」で、精神障害者の入院に関わる制度のあり方や、患者の意思決定および患者の意志に基づいた退院後の支援のあり方などを検討しております。

その検討結果と整合を取りながら、これまで区が精神科病院や社会復帰施設などの支援者と培ってきた連携体制を活用し、精神障害者への支援を進化させていく考えです。

 

区の会議として、地域精神保健福祉関係者連絡会、自立支援協議会の専門部会である地域包括ケアシステム・地域移行部会もあるが、それぞれの会議の役割、メンバーは。

(かとうぎ桜子)

具体的な長期入院への対応という会議を進める中で、また、これから国の動きも明確になってくる部分もあると思いますので、しっかりと連携しながら、よりよい形になるよう進めていただきたいと思います。

精神障害のある人の施策の検討の場として、1985年から行っている地域精神保健福祉関係者連絡会、また、2019年度からは自立支援協議会の専門部会として地域包括ケアシステム・地域移行部会を実施しているとお聞きしました。

それぞれの会議の役割とメンバー構成をお聞きします。

 

前者は区内4地域に分けて関係機関が情報交換等をし、交流している。保健相談所が中心になって、病院・診療所、訪問看護ステーション、社会福祉協議会などが参加。

後者は、地域包括ケアシステムの構築について協議。病院の医師・ソーシャルワーカー、就労支援事業所等が参加。

(保健予防課長)

地域精神保健福祉関係者連絡会は、区内を4地域に分けまして、関係機関が情報交換や学習会、講演会を通じて活発に交流し、連携協力を深めています。

会議は保健相談所が中心に行っており、区内近隣区の精神科病院や診療所、訪問看護ステーションや社会福祉協議会のボランティアコーナーなど、実務担当者が参加しております。

 

また、地域自立支援協議会の専門部会である地域包括ケアシステム・地域移行部会は、障害者が地域で暮らし続けるための取組や地域で安心して生活ができるよう、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について協議しております。

議には、精神科病院の医師やソーシャルワーカー、就労移行支援事業所や家族会、特別支援学校生徒支援事業者(←放課後等デイサービスの事業者のことですね)、知的障害支援事業者や高次脳機能障害支援者など、他障害の地域移行に関わる支援者が参加しております。

 

区だけではなく民間事業所も含め様々な関係者が会議に参画しているが、すべての精神障害者が孤立せず暮らせるようにはなっていない。本人の意思の尊重、権利擁護を進めるために、連携と個人情報保護との兼ね合いはどうするか、カンファレンスはだれが実施するのか。幅広い支援者との連携、情報共有が必要だが区はどう考えているか。

(かとうぎ桜子)

今までの質疑の間で、三つの会議体があるというお話をしてきました。

どの会議も、区の関係者や病院の関係の方だけではなくて、精神障害者が地域で暮らすときに支援する訪問看護等の事業所の人も参加があるということです。

一方で、現状では、地域で暮らす精神障害のある人がみんな、誰もが孤立することなく暮らせる社会になっているかというと、まだまだだと思います。

生活に不安や困りごとを感じていても、自立支援医療による通院や生活保護以外の社会資源に十分につながることができていないという当事者にお会いすることも多いです。

 

入院するか、退院するか、また、地域でどのような住まいを確保するか、どのような支援を受けるか、本人の意思を尊重し、権利擁護の視点の下にサポート体制をつくるためには多くの支援者が関わり、連携することが必要であると思います。

 

そのためには、個人情報保護との兼合いはどう考えるか、カンファレンスは誰が音頭を取って実施するのかといった課題もあり、その体制もまだまだ十分ではないと感じることもあります。

地域包括ケアの体制を充実させるために、保健師、ケースワーカー、また民間事業所も含め、支援の方向の共有や質の向上が必要だと考えています。

 

会議体に参加している人は限られた人数になると思いますので、より幅広く精神障害のある人に関わる現場の支援者が、情報共有、連携を進める方法が必要だと考えています。

その点について、区としてどのように捉えて実施しているかをお聞きします。

 

入院患者の退院支援ならば病院が主導、在宅の人の場合は保健相談所や相談支援事業所が軸となって行うなど、状況により適宜実施。

(保健予防課長)

カンファレンスは、その方の状況を踏まえ、適宜行われます。

例えば、入院患者の退院に向けたカンファレンスは病院が主導し、また、在宅の方への支援カンファレンスは保健相談所や支援計画の作成を行う計画相談支援事業所が軸となって行うことが多くなっております。

カンファレンスの実施に当たりましては、必要な関係機関が集まり、それぞれが守秘義務を守り、個人情報の保護に配慮しながら行っております。

会議で共有した課題や情報につきましては、おのおのが属する団体に持ち帰り、情報共有するなどして連携の強化を図ってまいります。

 

カンファレンスが行われない状態は起こらないようにしてほしい。

自立支援協議会の専門部会では精神障害以外の障害のある人の地域生活もテーマになっているがその検討状況は。

(かとうぎ桜子)

カンファレンスが行われない状態にはならないように、地域の中で生活や体調に不安を抱えながら孤立してしまう人が生じない体制づくりについて、ぜひ積極的な取組を進めていただきたいと思います。

 

それで、地域包括ケアシステム・地域移行部会では、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムについてだけではなくて、障害のある人が地域で暮らすために必要な社会資源についても協議テーマとなっています。

先ほどのご説明で、知的障害や高次脳機能障害に関する方もご参加になっているということでした。このテーマについて、現在の検討、協議状況をお聞きします。

 

障害の重複、複雑化により高い専門性が必要になっているが支援者が十分に対応しきれていないなどの意見が出ている。それをふまえて社会資源のネットワーク構築や連携、人材育成について協議・検討を行っている。

(保健予防課長)

専門部会では、障害の種別により地域移行に必要な社会資源や生活環境が異なる、障害が重複化、複雑化し、高い専門性が必要になっているが、支援者が十分に対応し切れていないことがあるなどの意見が出ています。

このような意見を踏まえ、障害者が安心して地域で暮らすための訪問看護ステーション、就就労支援事業所等の社会資源のネットワーク構築や、連携のあり方、人材の育成について協議・検討を行っております。

 

(かとうぎ桜子)

精神障害以外の障害のある人も含めて、安心して暮らし続けられる体制の充実が必要だと思います。ぜひ、今後も積極的な議論を進めていただきたいと思います。